1.治療の概要
ピコセカンドレーザーは、レーザーピコ秒単位のパルス幅で発振するレーザーの呼称です。美容皮膚科領域で用いられるレーザーにはピコ秒以外に、ナノ秒、マイクロ秒、ミリ秒で発振するレーザーがあります。
ピコセカンドレーザーは、ナノ秒単位で発振するQスイッチレーザーの問題点を克服すべく開発された新しいレーザーです。Qスイッチレーザーは色素性病変と刺青の治療に用いられてきました。ピコセカンドレーザーは、Qスイッチレーザーで分解しきれなかった小さなインク(刺青のインク)を分解することを目的に開発されましたが、アジアではさまざまな色素性病変を、より安全かつ効率よく治療するレーザーとして広まっています。
このレーザーは照射方式には3つの方法があり、それぞれ異なる目的で用いられます。
- スポット照射(通常照射):メラニン色素と刺青のインクを分解することを目的に用いる照射
- トーニング照射=ピコトーニング:皮膚のターンオーバーの促進と真皮浅層のコラーゲンの増生を目的とした照射
- フラクショナル照射:皮膚のリモデリングを目的とした照射
ピコセカンドレーザーは機種によって発振波長やパルス幅などの設計が異なります。
色素性病変をできるだけしっかり取りたい方、真皮にある色素性病変の治療を受けたい方、肝斑の併用治療のひとつとして積極的な治療を受けたい方などに適した治療です。
5.治療回数と間隔
色素性病変の種類と肌質、選択した照射方式によって異なります。
- 日光性色素斑(シミ)、雀卵斑(そばかす):1~3回、1.5か月間隔
- 遅発性太田母斑様色素沈着(真皮メラノサトーシス):ピコトーニングの場合、5回以上、1.5か月間隔
- 母斑細胞母斑(ほくろ):1か月以上の間隔 3-5回 (*炭酸ガスレーザーとの併用でより少ない治療回数で改善が得られます『炭酸ガスレーザー』参照)
状態によって追加治療の時期と回数を決定しますので、上記は目安です。
6.ダウンタイムと合併症、注意点
スポット照射の場合、治療した部分にかさぶたができます。
- かさぶたが取れるまでの日数の目安は、顔で7日、手の甲で7~10日です。
- かさぶたが取れるまで、朝晩、軟膏を塗布してもらいます。そのうえからであれば、メイクをすることもできますが、かさぶたを不必要に刺激しないように注意する必要があります。
ピコトーニングの場合、目立った反応はありませんが、不用意な肌の刺激は避けてもらいます。
合併症として、比較的高頻度に炎症後色素沈着、紅斑を認めます。低頻度に水疱形成があります。いずれの合併症もQスイッチレーザーよりは発症リスクを低く抑えられます。
- 治療後には最短でも1か月間の紫外線防止が必要です。外出時に限らず屋内でも紫外線があたる場合は紫外線防止剤(日やけどめ)の使用を徹底してもらいます。
- 肌質や状態によって、炎症後色素沈着を予防するために、かさぶたが取れた日から美白外用剤(ハイドロキノン)を使用してもらうことがあります。
色素性病変の多くは再発する可能性があること、また、まったく見えないレベルまで薄くなるかどうかは病変と肌質次第であることをご理解ください。
肝斑と合併する日光性色素斑には、この治療は向いていません(シミ・その他の色素沈着)。